ISIL(イスラム国)を分析1。(ユーロとイラク戦争)

はじめに

最近ニュースでは、国際テロ組織ISILが頻繁に登場していますね。ISILはイスラム国と名乗っていますが、世界的に国とは認められていません。世界の認識は、凶悪なテロ組織です。この記事では、ISILをスピリチュアリズムを通じて解説していきたいと思います。

スピリチュアリズムと言うと、
「なんだか不思議な力を使って、いろんな秘密が分かっちゃうのだろうな」
と思われるかもしれませんが、そんな事はありません。以前から公言している通り、私には霊的な物を見る力はありません。

そもそもスピリチュアリズムとは
「霊的世界を肯定し、真善美を追求する」
という思想です。目的は大我の愛を追求していくこと。思想のもと行動する人をスピリチュアリストと呼びます。真実であること、善意であること、美意識を持つこと。これらがスピリチュアリズムの柱となります。

真実である事とは、物事を深く分析する能力

善意とは相手のための思考や行動。

美意識とは芸術性や理念を追求する事です。

これらは霊的能力を持っていなくても誰にでもできます。そもそも霊的世界を肯定する事と、人間性の向上とは全く関係ありません。霊的世界を否定していても、真善美を追求していれば、魂は磨かれるのです。

スピリチュアリズムは、霊的世界を信じる事を重要視していません。霊的世界を信じる信じないは、魂の成長に於いて、関係ないからです。私の場合は霊的世界を肯定しているので、スピリチュアリストとしてISILを分析し解説していきたいと思います。

この記事は、ISILを庇護する為のものではありません。テロは全く持って、許されない行為です。ただ、多角的な視点を持ち、あなたの判断材料を増やす意味で、参考にして頂ければ幸いです。

 罪を憎んで人を憎まず

罪を憎んで人を憎まず。
有名なことわざですね。犯した罪は憎んでも、それは何か事情あっての事だから許してあげましょう。という意味です。とは言え、そんな事は非常に難しいのが現実です。なぜなら憎むべき相手がいないのであれば、憎しみの感情はどうやって消化すれば良いのでしょうか?

方法は2つあります。一つは「大我の心を持つ」こと。あなたの心が愛で満ちれば、憎しみは消えます。憎しみを救うのは、憎しみでは無く大我の愛です。

もう一つの方法は真実を知ることです。相手を知り理解する事で、見える世界や感情は大きく変化します。今回は「真実」について追及していきたいと思います。罪を犯す事情があるのであれば、ISILにはいったいどの様な事情があるのでしょうか?

 ISILはイラク戦争によって生まれた

ISILの指導部には、元イラクの官僚がいます。サダム・フセインがイラクの大統領だった時の官僚です。フセイン大統領は「凶悪な独裁者」というのが一般的なイメージでしょう。

イラク戦争と言えば、イラクが大量破壊兵器を持っているとして、アメリカが2003年にイラクに対し宣戦布告した戦争です。戦争終結後、アメリカ軍とUNMOVIC(国連監視検証査察委員会)により調査が進められた結果、大量破壊兵器は見付かりませんでした。

つまりアメリカは、ありもしない大量破壊兵器のために、イラクに戦争を吹っ掛けたことになります。その時のイラクの官僚が、ISILの指導層にいるわけですから、ただのテロ組織にしては、何か違和感があります。

フセインは有能な独裁者?

マスコミの報道により凶悪なイメージが付いているフセイン。そもそも彼は、どの様な政治家だったのでしょうか?フセインが大統領だった頃、彼は中東の優等生と呼ばれ、イラクの近代化に力を入れていました。

義務教育を無料で行い、小学校の就学率を100%に。小学3年生から英語教育を行い、だれでも大学に行けるようにしました。その結果、若者はアメリカやイギリスに留学する事ができました。その成果は国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)に表彰されるほどでした。

また中東の国々はイスラム教徒が非常に多い関係上、女性が政治に関わる事は非常に稀です。それにも関らず、イラクの政治家の2割が女性議員でした。さらに、周辺諸国から弾圧されているクルド人には自治権を与えていました。本当に独裁者なのかと疑うほどの善良な大統領です。

それでは何故、アメリカはイラクを攻撃したのでしょうか?それはヨーロッパで誕生した「ユーロ」、そしてアメリカの借金と基軸通貨に関係があります。

 アメリカは借金大国だけど大金持ち?

2000年9月末のアメリカの負債は、5兆6742億ドルありました。相場は1ドル108円でしたから、日本円にして612兆8136億円。ずばり、世界一の借金大国です。しかしアメリカは世界経済の覇権を握ったままです。何故でしょう?それは米ドルが世界の基軸通貨だからです。

基軸通貨とは、国際社会の中で中心的な役割をする通貨の事で、為替や国際金融取引での基準として採用されています。その時代で最も経済力のある国の貨幣が基軸通貨となります。1920年代まではイギリスのポンドが基軸通貨でしたが、第1次世界大戦(1814-1818)でイギリスが経済的に消耗したため、アメリカの経済的発達もあり、第2次世界大戦(1839-1945)後には米ドルが基軸通貨となりました

※為替とは、手形や小切手、振込など現金を直接渡さない金融決済のこと。
※国際金融とは、国と国との間での資金の移動のこと。

自国の通貨が、基軸通貨だとメリットがあります。基軸通貨は世界中で使われるお金。そのお金を印刷して発行するのはアメリカ。つまりアメリカは、世界中のお金の量を自分の都合のいいように調節して生み出す事ができるのです。自分で好きなようにお金を生み出す事ができるので、いくら借金していてもつぶれる事はありません。また、基軸の通貨ですからドルの価値が極端に下がる心配もありません。

そんな行け行けドンドンのアメリカに、待ったをかける国がありました。そう、イラクです。

 イラクがアメリカの基軸通貨を脅かす

2000年9月にフセインは
「イラクは石油をドルでは売らずに、ユーロで取引する!!」
と宣言しました。この宣言が、後にアメリカがイラクに戦争を仕掛ける原因になります。

フセイン大統領の宣言より少し前。1999年1月に、ヨーロッパでユーロが誕生します。ユーロとは、欧州連合の経済通貨同盟で用いられている通貨で、ヨーロッパの経済を強化する為に生まれました。ヨーロッパ内での貿易にユーロを使用する事によって、経済活動を活発にするのが狙いでした。

当時のアメリカは1990年代末期に起こったITバブルに沸いていて、ユーロに対する関心は低い物でした。アメリカ市場はIT(インフォメーション・テクノロジー)という未知の存在に可能性を感じ、飛ぶように株が買われたのです。しかし実態は、真っ当なIT会社ばかりではありませんでした。ITとは名ばかりで資金集めが目的であったり、実力が無く倒産してしまったり、未公開株を使った詐欺などが横行したりなど、実体経済以上に市場が膨れ上がっていたのです。そうして株が買われすぎた反動で、2000年12月にITバブルは崩壊してしまいます。

そんな時期のフセインの宣言です。アメリカは、ようやく事態の深刻さを理解します。ユーロの狙いは、ヨーロッパの経済強化のほかに、もう一つありました。基軸通貨の乗っ取りです。基軸通貨がユーロになれば、ヨーロッパの経済は更に活性化します。そのためには、世界中にユーロをたくさん流通させる必要があります。つまり、ユーロで沢山の取引をすれば良いのです。

石油の取引は、米ドルで決済されます。理由は米ドルが基軸通貨だからです。基軸通貨は市場での流通量が多く、信頼があります。例えば日本が石油を買う場合、まず円をドルに両替します。そのドルでようやく、石油を買う事が出来るのです。

石油などのエネルギー資源の取引には、莫大なお金が動きます。その取引を、「今後はドルでは行わない」とフセイン大統領が宣言したのですから、さあ大変です。世界のエネルギーの取引がドルからユーロに変わってしまったら、ドルは基軸通貨では無くなってしまします。そうしたら最後、アメリカに残されるのは、ITバブル崩壊によって更に膨れ上がった借金のみです

強硬手段にでるアメリカ

この時期の流れを時系列にまとめますと

  • 1999年1月 ユーロ誕生。ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、アイルランド、ポルトガル、スペイン、オーストリア、フィンランドの11カ国で導入される。アメリカはITバブルの真っ最中。
  • 2000年11月 イラクのフセイン政権が、石油取引をドルからユーロに転換。 国連の人道支援「石油食料交換プログラム」もユーロで実施。
  • 2000年12月 アメリカITバブル崩壊
  • 2001年9月 アメリカ同時多発テロ発生(9・11テロ)
  • 2002年1月 アメリカのブッシュ政権はイラン、イラク、北朝鮮をテロ支援国家とし、悪の枢軸発言。
  • 2003年3月 アメリカがイラクに戦争を仕掛ける(イラク戦争)。その後、石油取引をユーロからドルに戻す。
  • 2003年12月 アメリカ軍兵士、サダム・フセイン大統領を拘束。
  • 2006年9月 アメリカ上院情報特別委員会が、イラク戦争の開戦前に米政府が保持していたフセイン政権の大量破壊兵器計画および、国際テロ組織アルカイダとの関係についての情報を検証した報告書を発表。
    報告書では、「フセイン政権がウサマ・ビンラディンと関係を築こうとした証拠は無い」と断定。また、開戦当時における、イラクの大量破壊兵器の存在も否定した。
  • 2006年12月 サダム・フセイン大統領の死刑執行。

2006年9月にアメリカ上院で、「イラクに戦争をけしかけたのは間違いであった」と発表しているのにもかかわらず、その3ヶ月後にフセイン大統領の死刑を執行しているのですから、もう無茶苦茶ですよね。

ちなみに、イラク戦争はアメリカを中心とするイギリス、オーストラリア、ポーランドの有志連合が、イラクと戦った戦争ですが、この有志連合4ヵ国にはある共通点があります。それは「ユーロに加盟していない」という事です(現在ポーランドに関しては、2016年にはユーロ加盟の準備が整うとして、加盟に向けて調整中です)。つまり、ユーロがどうなろうと全く関係ない国同士で有志連合を組み、イラクに戦争をしかけた訳です。
結果として、石油の取引はドルに戻り、米ドルは基軸通貨のまま安定しました。アメリカは戦争により、自国の利益を守る事ができました。

それでは何故、イラクは石油の取引をユーロ建てにすると宣言したのでしょうか?この宣言は、どう考えてもアメリカに喧嘩を売っています。その理由については、次回のブログで解説していきたいと思います。

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